“止まれ”が伝わった!娘と老馬が心を通わせた、ニッケ乗馬クラブ・クレイン加古川での乗馬デビュー
先日、小学1年生の娘と一緒に、兵庫県加古川市にある「ニッケ乗馬クラブ・クレイン加古川」へ乗馬体験に行ってきた。乗馬といえば、どこか敷居が高いイメージもあるけれど、ここでは初心者や子どもでも安心して体験できるような配慮がたくさんされていた。
今回、体験したのは娘。もちろん馬に触れるのも、乗るのもまったくの初めて。ドキドキとワクワクが入り混じる顔でクラブハウスの門をくぐった。
出会いは「よろしくね」のご挨拶から
最初に案内されたのは、体験乗馬を担当してくれるお馬さんとのご対面。出てきたのは、なんと真っ白な美しい馬。聞けば、以前は競走馬として活躍していたけれど、今は引退して、ここで穏やかな余生を送っているとのこと。
娘は少し緊張しながらも、まずはバケツの水をそっと差し出して「どうぞ」と挨拶。その後、インストラクターの方に教えてもらいながら、馬の首筋や額をやさしく撫でて「今日はよろしくね」と声をかけた。馬の方もどこか安心した様子で、目を細めてじっとしている。のんびりした性格のようで、なんとそのまま立ったままウトウトと寝てしまいそうに。
馬とのふれあいが、こんなにもあたたかくて静かな時間だなんて、正直驚いた。
身支度からすでに冒険
続いては装備の準備。娘は長靴に履き替え、ヘルメットをかぶり、背筋をピンと伸ばす。すでに気分は小さな騎士。スタッフの方があぶみ(足をかける部分)を丁寧に調整してくれて、いよいよ馬に乗る瞬間。
「はい、左足をここにかけて…そのまま、よいしょ!」
ぐっと体を引き上げて鞍にまたがると、娘の目線が一気に高くなった。地面を見下ろす高さに「わぁ…」と小さな声がもれる。最初は少し恐がるかなと思っていたけれど、その目は明らかに好奇心に満ちていた。

馬上から見る世界と、心を通わせる体験
乗馬中は、インストラクターの方がつきっきりで丁寧に教えてくれる。手綱の持ち方、背筋の伸ばし方、そして何よりも「目線を先に飛ばす」こと。
「下ばっかり見てたら、馬もどこに行っていいかわからへんよ〜。遠くを見てあげてね」
何度もそう声をかけられるが、馬上から見る世界は想像以上に高く、娘はついつい下を見てしまう。それでも、少しずつ顔をあげ、視線を前へ、遠くへと向けていく。
「歩いて…止まって…」
インストラクターの合図に合わせながら、手綱を軽く引いたり、足でそっと合図を送ったりして、馬を前進させたり止めたりする。完全に自分ひとりの力ではない。でも、馬と気持ちがつながったときの感覚は、何とも言えない満足感があるようだった。
馬の背中に乗っている間、娘は終始、真剣なまなざし。それでも、馬がトコトコと歩くたびに自然と顔がほころんでいく。リズムよく揺れる感覚も、風に吹かれながら進んでいく気持ちよさも、すべてが新鮮。
終わりには「ありがとう」を
体験が終わった後は、お世話になった馬へのお礼の時間。娘はゆっくりと馬の顔を撫でながら、「ありがとう」と優しく声をかける。馬もそれに応えるかのように、ふぅっと鼻から息を吐いてじっとしていた。
この、何とも言えない静かな交流の時間が、見ているこちらまでじーんとさせられる。言葉が通じなくても、心はちゃんと伝わる。そんなことを教えてくれる場面だった。

乗馬は「体験」では終わらなかった
体験後、ヘルメットを脱いだ娘は、少し誇らしげな表情を浮かべてこう言った。
「わたし、乗馬ならいたい!」
それは、ただのお遊びとしての体験ではなく、「もっとこの世界に入りたい」という気持ちの表れだったように思う。馬とふれあい、自分の体と心で関わり合い、そして小さな成功体験を積んだことで、彼女の中に芽生えたものがあったのだろう。
乗馬というと、大人の趣味やスポーツのイメージが強いかもしれない。でも、こんなふうに小さな子どもでも安心して体験できる場所があるのは、本当にありがたいことだ。
おわりに ー 馬が教えてくれること
馬と過ごす時間は、静かで、穏やかで、でも確かに心が動く時間だった。大きな体に包まれながら、でもどこか繊細で、こちらの心にそっと寄り添ってくれるような存在。
日常の中ではなかなか得られない、動物との深いふれあい。娘にとっても、かけがえのない時間になった。