僕を愛したすべての君へ/君を愛したひとりの僕へ ~40代おじさんが語る切ないラブストーリー~

はじめに

乙野四方字さんの小説を原作とした『僕を愛したすべての君へ』を読んだ。本作は、並行世界を舞台にした切ないラブストーリーだ。同時に刊行された『君を愛したひとりの僕へ』と対をなす作品で、どっちから読むかで結末が変わる作品。

ドングリfmのエピソード933回でなつめぐさんが紹介してあったので、2年後に読んだ。作品自体は2016年刊行なので9年前の作品を今更ながらだが感想を書こうと思う。


あらすじ(※ネタバレなし)

主人公・高崎暦は、両親が離婚した影響で、ある世界では母親と、別の世界では父親と暮らしている。本作『僕を愛したすべての君へ』では、暦がクラスメイトの瀧川和音と出会い、恋に落ちる物語が描かれている。

この作品の特徴は、「パラレル・シフト」という概念。並行世界を行き来できる技術によって、暦と和音の関係に大きな影響がもたらされるというもの。


切なさを増す「パラレル・シフト」という設定

本作の大きなポイントは、並行世界が存在するという設定だ。「パラレル・シフト」によって、暦が別の世界へ移動することで、彼と和音の関係性が変化していく。この要素が、ただの恋愛小説とは一線を画し、SF的な深みを加えている。9年経った今でも実におもしろい。


40代おじさんの視点から

10代・20代の頃なら、純粋に「運命の恋」として受け取ったかもしれないが、40代の今となっては、「人生の選択」という視点でこの物語を読んでしまうのだ。

「もし、あのとき違う選択をしていたら……?」そんな思いを抱くことが増えた年代だからこそ、この小説が胸に沁みる。暦と和音の選択、そして別の世界での暦の姿に、自分の人生を重ねてしまうものだ。喫茶店で一人、一気に読みきったあとに高校・大学のころの自分を思い返しせつなくなったのであった。夕日が目に染みるぜ。


まとめ:切ないけれど美しい物語

僕を愛したすべての君へ』は、恋愛だけでなく、人生の選択や運命について考えさせられる作品だ。切ないけれど美しい物語に、40代のおじさんは大いに心を揺さぶられた。

若い世代はもちろん、人生経験を積んできた大人にこそ読んでほしい小説だ。もう一つの作品『君を愛したひとりの僕へ』とセットで読むと、それぞれの視点から感じることがまた色々と出てくると思うので、ぜひ読んでもらいたい。どっちから読もうかな〜って人は、どっちからでもいいよ!と伝えておこう。

追記
映画なってたんや…ぜんぜん知らなかった…あとで観てきまーす。