父のお化け

お化けというものを信じるかと聞かれたら、信じると答える。見たことはないけれど。そういった類のものがここではよく見られるらしいという場所に行っても何も感じたことすらない。
*お化けとは、妖怪や霊などの総称

修学旅行で行った沖縄の防空壕。友人は入口当たりで座り込んで気分が悪い、重いと言った。嘘やろwって思った。だけど、今はそう思わない。それは、年と共に経験を積み、考えが変わっていったからだ。

父親が亡くなってもう25年が経つ。

両親と住んでいた家も今はない。
その家に住んでいた頃に、ふと思い立ち「親父、おるんやろ。おるんやったら何でもええからおるって分からせてくれよ」と一人自分の部屋で声に出した。

20歳くらいだったか。そんな青年が一人部屋で声に出す言葉としては心細すぎる、不安定な精神を吐露したようなもんだ。

まぁ当然なにも起こらないに決まっている。のだが、そうではなかったのだ。

襖がガタガタと音を立てたのだ。おるやん。やっぱり。

父親が亡くなってもう25年が経つ。

後にも先にも父のお化けに会えたのはあの1回だけだ。”1度”としないのは、2回目があると思っているからだ。いつも見てんだろうなぁ。