ストーリーが世界を滅ぼす
『ストーリーが世界を滅ぼす』は、物語の力と影響について深く考察した内容であり、現代社会におけるストーリーテリングの功罪についての一冊だ。
書店にこの真っ赤な本が並んでいるのはよく見ていた。人は物語が好きだ。物語性のある話に人は惹かれる。プレゼンでは物語調であるほうが説得力が増し、人はプレゼンに耳を傾ける。というような話なのかなーと思って買うまでにはいたっていなかった。
ところが、やや話は違うらしい。
物語を語る、語り部(ストーリーテラー)や物語を話すこと(ストーリーテリング)についての考察が主なのだ。これは面白そうだ。
物語がかつて集団を結束させ、民族に道徳的規範をもたらす手段として活用されてきた歴史を振り返ると、その重要性は明らかでだ。しかし、現代においては物語が社会に分断をもたらす原因となっている側面も見逃せない。特に政治的分断や環境破壊などの問題が物語の影響下にあることが指摘されており、物語が持つ二面性に改めて気づかされた。
我々が日常的に行うコミュニケーションには他人の心に影響を与えるという重要な役割がある。
物語は他人の心に最も強力な影響を与える手段であり、その力は共感や理解、慈善、平和の促進だけでなく、分断や不信、憎しみの種を蒔くこともある。
この二面性は我々が物語を通じて人々とつながり、同時に分断を生む可能性を理解する上で重要だ。
また、ストーリーテリングは感情を動かし、人を説得する力を持っている。優れたストーリーテラーは感情と心を操作し、人々を引き込むことができる。しかし、物語が人々を善悪のカテゴリーに分断する限り、共感だけでなく非情さも生み出す可能性があることに警鐘を鳴らす必要がある。
文化や技術の変化が急速である現代社会では、事実やエビデンスよりも物語やストーリーテラーの影響力が増大していることが指摘されており、物語の語り手を疑うことの重要性を再確認した。