煌夜祭 多崎礼
物語を語る語り部と、冬至の日に人を喰らう魔物を巡るファンタジー小説と言えばいいのだろうか。とかくに物語は悲哀を含むことが多いが、人が生きていく中で時代の流れに飲み込まれていく様を自分の生活に置き換えてみるという経験が読書なのだろう。
それぞれの国で起こった出来事を語り部が物語として語っていく。その語りは昔々の話であったり、伝聞であったりする。話題は魔物にうつる。魔物はなぜ人を食わねばならぬのか、なぜ世が乱れるときに人から魔物が生れ落ちるのか、魔物を殺す方法はあるのかなどなど。
そして語り部と魔物との関係に言及していく。
出てくる人物は冒頭から押さえながら読み進めるのが良い。登場人物の名前がカタカナであると誰が誰か分からなくなる。相関図を書きながら読み進めると尚良し。
この1冊では語り尽くせぬ感はとてもある。前回の「たった一つの冴えたやりかた」もそうなのだが、1冊で完結はもったいないなぁ。アニメや映画になってないのか検索したけれど、ないようだ。
最後に。自分も子の親になり、そして祖父母や自分の親世代の人たち亡くなっていき、自分たち世代がメインで生きている今がある。
自分の子が親になり、自分が祖父になることを想像する。こういう小説を読むと、ふと日常で立ち止まることができる。物語というのは紡がれていくものなんだと、ようやくこの年になって分かってくる。次へと継いでいく物語を日々作っていることに気づかされるのだ。