「させていただく」大研究
「今から説明をさせていただきたいと思います」という言葉が大嫌いだ。「今から説明いたします」でええやんと思う。「させていただく」も「思う」もあんたの誰への配慮か知らんけど、さっさと始めてくれといつもいつも思う。無駄にイライラさせられる。狭量かね…。
その、させていただくに関しての研究を複数の先生方が行っているのがこの本だ。3600円と結構いいお値段なのだが実に面白かった。
冒頭から結論をバチーんと述べてくれているので、後半もダレずに読み通せるのも良いポイント。
個人的に興味深かったのは第3章「漫才談話の結末句の機能と変遷」だ。関西大学の日高水穂教授が書いているのだが、データ分析がクッソ楽しい。古今東西の漫才を見聞きして情報を収集したのかと思うと胸熱。
自分が理解したところだと、させていただくは敬意漸減の流れを受けている。敬意漸減とは、当初は敬意を持たせていた言葉が擦られまくって、人口に膾炙すると敬意が減っていくという現象だ。させていただくも、この流れから逃れられない。
そして、三省堂国語辞典の編集者の飯間浩明氏の論文では
“謙譲語にできない動詞があるという日本語の敬語体系の欠陥を補う役目を果たしている。動詞の後ろにつけさえすれば謙譲語が作れという運用規則の単純さも、使用拡大の一因。させていただくは複雑な日本語な敬語体系の規則の欠陥やスキマを補填する表現であり、これからも批判されながら使用されるだろう。”とある。
実に興味深い。させていただくは、謙譲語がない尊敬語だったり、とっさに謙譲語が作れない場合に便利すぎる言葉なのだ。だから、使う。しかし、へりくだる必要のない時は使わないほうが良い。そして何度も何度も使わないほうが良い。
それを意識しておれば自分みたいにイライラさせることは減るのではないだろうか・・・
“他者に対する表現の敬語から自己呈示的な品行の敬語への変化“