2022年 印象的な本たち
1.自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く
職業柄、自閉症の生徒を見ることは多く、この本にあるような事例にうんうんと納得する。自閉症児が方言を話さないのは、社会性の欠如によるものなのか、それとも言語獲得上の問題なのか、それとも別の問題なのか。自閉症児に関わる多くの人にとって当然と言えることをきっちりまとめてくれており、かつユーモアもある本だ。
2.人間の性はなぜ奇妙に進化したのか
人の性について書かれているのだが、堂々とこれを公の場で広げるのはちとためらう。特に子どもに何を読んでるのか問われたときに答えに窮するが、これまたおもしろ本なのでおすすめ。
3.物価とは何か
なんだか重版がかかりまくって話題になっていた一冊。しかも最近出た本ではないが、現在の日本を予見というか理解するための書物のような気もする。なんといっても例えがおもしろすぎる。しかも、まじで素人にも分かるように学者先生が書いてくれているのでありがたい。
4.質問
田中未知の書籍。ずっと欲しかったがどこにも売っていなかった。質問が延々と書かれているのだが、これがまた独特で小気味が良い。手に取ってまず思うことは、この新書・・・ふっと!だ。
5.蠅の王
閉じた環境下で少年たちがどう変化をしていくかを描いた小説。1950年発表の作品?まじで?中古では1円で買えるので、暇ならどーぞ。
6.すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険
コラム的に書かれている。通勤中の信号停止時にパラっと読み進めた本。あらためて自分の体って不思議。見えない部分でよくわからないまま自分は生かされているような感覚を覚える。そして、現代の薬や医療の発展の上に生活できていることに深く感謝することだろう。
7.ことばと算数 その間違いにはワケがある
算数の力を上げるには国語の力が必要である。これはよく言われることだ。なぜなら、単純に数字の四則計算をするのが算数ではないからだ。問われてある内容を理解し、それを数学的に処理をしなければならない。やはり基底科目の国語がくそ大事というのが良くわかる。
8.社会性を育てるスキル教育35時間 中学1年生~3年生
ヒトは社会性の動物である。社会性は訓練することで身に付けることができる。昔は親や兄弟、近所のおばちゃん等と生活する上で学べていたソーシャルスキルが、現在では欠落している子供が多くなってきている。そういった子供たちをカバーするために総合の時間や学年行事などで、意図して社会性を育てるスキル教育をぶちこんでいこうっていう本。
9.吉祥寺の朝日奈くん
風呂でのんびり読んだ。
10.子どもの算数,なんでそうなる?
自分の子供のミスと同じことをしてるので、それを言葉に落とし込んでくれているのが興味深い。子供は子供なりに論理的に考えようとするが、思考に限界がきてしまう。そこで面白い解答に至るわけだ。そこを責めても前進はないように思う。ゆえに、なんでそういう答えに至ったのかを聞き、分析することに価値がある。
11.算数文章題が解けない子どもたち: ことば・思考の力と学力不振
認知の問題なのか読解の問題なのか。興味深かったので、生徒にも試してみたところ、実に緊張感をもって問題に挑戦をしてくれた。この本を読んだ結論。学力の土台となる認知力は幼児のころから体系的に習得させたほうが、その子にとってめちゃくちゃ良い。お受験とかそういうのではなくね。
12.官能小説用語表現辞典
よくこれだけのものを集めたなぁ。
13.しあわせの書
種明かしはしない。文章も平易で読みやすい。そして一気読みしたほうが満足するだろう。
14.料理の四面体
とにかくうまそう。なんか、この本を読んだあとは自分でもイケてる料理を作れそうに思う。そして試した結果、妻に「これ何いれたん?」と訝しげに尋ねられるのであった。
15.しあわせの理由
海外SF小説。短編がいくつもある。想像しやすい話とさっぱーり想像できない話がある。特に好きなのは、フェルナン・クノップフ『スフィンクスの愛撫』をモチーフにしたあれ。
16.数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた
もうこれ最高。ダニエルエベレットの息子のケイレブエベレットの作。数があったから言葉ができた、という、もうここだけで痺れる。今年ベスト5に入る一冊。必読。
17.新解さんの謎
仕事柄、辞書を複数冊所有している。生徒達にはその複数の辞書を引き比べさせてみて、自分にあう辞書を買うことをおすすめしている。現実は、小学校の時に辞書を買って、中学校では辞書を引かない生徒が大半になる。時間がないという言い訳と、スマホの普及で即時的に調べることができるからだ。人は易きに流れるものだ。小学生の時のように無限に時間があるように感じないのだから仕方ない。さて、この本は新明解国語辞典の語釈がおもろくて、この編集してる人ってどんな人なんだろうって話だ。新解さんの謎は深まっていくばかり。一冊丸々、新解さんかと思ったら後半は別のお話でがっかりした一冊。
18.クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方
夢はとにかくやってみて、そして捨てる、これが良いという。夢を夢のままにしておくこと、これが最悪の手だという。そのままにしておくと、いつまでも夢は頭の片隅にあり、あなたをじわりじわり浸食していっている。だから小さなことでも良いから始めること、それでだめなら、次へ次へ。これは慧眼だな。夢を持たなきゃいけない症候群の人に読んでほしい。
19.単純な脳、複雑な「私」
脳関係の本って定期的に読みたくなる。読んで、それを実践に移すのはまた別なのだけれど、なるほどなーおもしろいなーが多くて、ついついページを繰るのだ。
20.ことばの発達の謎を解く
今井むつみ先生の著書を片っ端から読んでいる。自分の子供と比較しながら読むので、ことさらに興味深い。そして、相変わらず喩えが明快で、専門書の知識を新書レベルにまで下げてくれているのが読みやすさを増している。
21.「いき」の構造
3年くらいかけてじわじわ読んだけれど、もはや惰性で読み進めてあんまり頭に残っていない。残念。そしてKindleでは無料で読める。
22.月の裏側 (日本文化への視角)
レヴィストロースが来日した際に見聞きしたものを中心に、日本文化をおもしろい面から書いている。古典から引っ張ってくるときに、ほんとよく日本のことを理解していて驚く。どんな脳みそしてんだろうか。個人的にはスサノオのくだりとか、セーファーウタキの項目はおすすめ。
23.魚がすいすい
tupera tuperaの本は大好き。子供も夢中になる。この絵本は屏風式に開いて読めるので迫力もあるし、こんなところにこんなものが!という発見のおもしろさもある。飾っていても素敵な一冊。とってもおすすめ。
24.知ってるつもり: 無知の科学
同じタイトルの新書を先に読んでいて、それの姉妹作だと勝手に勘違いしていた。断然、スローマンのこっちのほうがおもしろい。そして、生徒にも試してみて知識を共有したので楽しかったなー。
25.言語が違えば、世界も違って見えるわけ
色彩語について調べたいなーと思っていたときに出会った本。2022年は認知と言語について調べることが多かった。
26.読んでいない本について堂々と語る方法
まだ読んでいないので語れない。
27.暇と退屈の倫理学
哲学書っていつもいつも中盤がきつい。おもしろいことも多いのだが、苦しいなぁ・・・眠いなぁ・・・俺の頭アホやなぁ・・・と思いながら読み進めた一冊。
28.AIに負けない子どもを育てる
新井先生の前著も強烈だったけれど、今回もおもろーい。表紙が真っ赤なので表紙を外して読んでいる。AIへの誤解とか、教育どうすっぺ的な話だけれども、これもまた生徒に試してみてフィードバックをしていってる。
29.「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実
うまいは味だけでは決まらんっていう本。音も見た目も、体験自体が味を決めている。なるほどなー、家で料理するときも大事なことが見えてきてめっちゃおもしろい。
30.いつも「時間がない」あなたに
時間がないのでまだ読んでない。
31.ファスト&スロー(上下) あなたの意思はどのように決まるか?
行動経済学の本で合ってるのかな。人間の意思決定はいかにして作られているかとか、どう考えてもおかしいやろっていう行動を決定しちゃうのはなんでだとか。上下と骨太だけれど、くっそおもしろい。
32.先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち
前半は具体例も多くて興味深かったのだが、後半はしんどい・・・。
33.AI vs. 教科書が読めない子どもたち
新井先生の前著。東ロボくんの発展を中心に、いかにしてAIに学ばせるかとか、シンギュラリティはこねーよwとか、とは言ってもAIに代理される職は増えてくるよっていう数学者らしい切り口で書かれてある。
34.子どもは40000回質問する あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力
2022年で一番おもしろかった本。自分の子供と重ねて納得感満載。人が自分の力で世界を広げていくには認知力が根底にあって、好奇心がそれを後押しする。好奇心が世界を広げることに寄与している。とにかく読め!できれば子供がいる親は早く読め!っていう一冊。超おもろー。